湯けむり野営@北アルプス 191102-03 前編

もう師走ではありますが、この秋最後の野営を思い出しながらブログを書いています。

山登りも、釣りや山菜・キノコも好きですが、山の中で焚火をして野営をするのが一番楽しみです。

ほんの一時だけでも社会から完全に隔絶された山の中で、静かに焚火を眺めている時は、本来の自分に帰るような安心感を感じる時間でもあります。さらに、そこに温泉があれば!そして、酒と美味しい料理もあれば、これ以上至福の時は無い!

かつて、群馬、栃木、そして、噴火前の御嶽山の麓にある野湯にも行ってきました。

生命の危険を感じる超酸性泉、大雪の中で腰までしか浸かれない極寒温泉などなど、、、安全な温泉と快適なテン場適地が揃った場所は中々なくて、最後に辿り着いたのは北アルプスの湯俣温泉でした。晩秋の北アルプスで数時間の山歩きの後、最後に冷たい沢を渡渉して野営する物好きは、ほぼ誰もいないのですが、そこはグツグツと温泉が噴き出る桃源郷なのです。

お互い家族もあって都合がつかない釣友「師範」となんとか予定を合わせて、久々に野湯に行ってきました。

 

11月初旬。赤坂、乃木坂、紀尾井町、上野での仕事を終えてヘトヘトになって帰宅。少し仮眠した後、深夜に師範と合流。中央高速を長野方面へ。安曇野ICを出て、一般道を走り、七倉ダムに到着して車を停めます。

ここから先はマイカー規制で、高瀬ダムまではタクシーを利用できます。この週末が今年最後のタクシー営業期間でした。

タクシー運転手さんの話だと、先月の大雨での被害は他の地域に比べればかなり少ないそうですが、多くの登山者がキャンセルしてしまったそうです。また、この辺は昔は9月には霜が降りて、ステンレスのドアノブに触ると手がくっついたものだとの事。異常気象は一時的な事ではなく、11月でこの暖かさは本当におかしいと言っていました。

さて、高瀬ダム前の激坂はタクシーで登り、トンネル前に下車。ここから約4時間程度の登山道歩きです。

 

通常の野営装備の他、4m×5m防水ブルーシート、大型スコップ、多めの酒と食材、モンベル#01厳冬期シュラフと今回は装備が多く、久々にザックは20kgオーバー。スコップを杖代わりにして歩き出します。

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できればナメコがムキタケがあれば、夜の鍋は賑やかになるなあと思いつつ、キノコの気配のありそうな斜面を凝視しながら道を歩きますが、山の恵みは見当たりません。

前回は凍結していて滑りそうになった木道は、今回は全く凍結していません。

紅葉の山歩きは非常に気持ち良いけど、所々、先月の大雨で道が崩落していました。


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正面は槍ヶ岳の北鎌尾根。振り返ると七倉岳らしき山が見えます。

裏銀座ルートから竹村新道を通って降りてきた登山者数名とすれ違います。そして、営業の終わった晴嵐荘を右に見てさらに進みます。晴嵐荘に行く橋は先月の大雨で完全に流されていました。

ここで、テン場で使う飲料水を4Lほど補充。ザックがさらに重くなり、担ぐ時にフラフラします。

そして、踏板が所々欠けている、いや~な吊橋を渡ります。

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吊橋を通過して、小さな尾根を越えると、湯俣温泉の対岸に到着。しかし、まだ温泉は見えず、ここから渡渉をしてさらに上流へ行かないと温泉が湧き出る桃源郷には辿り着けません。

以前はこちら側にも足湯くらいはできる場所があったのですが、大雨で流されてフラットな河原になっていて、ここには温泉の気配は全くありません。 

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しかし、大雨ですっかり変わった川はかなりの水量でザブザブ流れています。

「ここを渡渉するのか・・・(汗)」

 渡渉用にTEVAのサンダル(師範は百均の偽クロックス)を持ってきていますが、この川に突っ込んで行く装備としてはかなり心細い。沢靴で来れば良かったかなと後悔・・・。

ひとまず左側の岸壁に足場があるので少し登って、上流に降りられるか行ってみます。

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「おおお!師範、危ない!」

ここで、もう足場がなく、引き返そうとするとザックが壁に当たって、沢に落ちそうになる。数メートル下の沢に落ちて流されたら流石にヤバそう。

慎重に引き返してまた河原に戻ってしまう。

 

しばらく悩んでいたけど、寒くなってきて、覚悟を決めて思い切って川を渡渉する事に決める。

一番深い所でおそらく腰くらい。流れは結構早そうだ。今まで沢登りでは何度も渡渉した水深だけど、今日の重いザックと足回りの装備だとかなり不安。

ヨシ!と意を決して、師範とお互いのザックのハーネスをしっかりと握り、スクラム渡渉で沢に突入。一歩一歩慎重に歩を進める。思った以上に水圧が強い!

持っていた大型スコップが水流に流されそうになって重心が傾き、ヤバい!と思ったが、なんとか持ちこたえて川を越える事ができた。ホッ。

 

そして、沢通しで少し上流に歩き、湯けむりが立つ台地へ登る。

やった。久々にやってきた。

 

目の前に湯けむりが立つ不思議な景色が広がる。誰もいないし、足跡も全くない。

大雨の後、ここに来たのは僕たちが最初のようだ。しかし、雪の降る季節までおそらく誰も来ないだろう。

 

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国の地質・鉱物天然記念物の「高瀬渓谷の噴泉丘と球状石灰石

この摩訶不思議なおっぱいの様な物体は、長年噴き出した温泉の石灰成分が堆積してできた「噴泉丘」。以前と変わらずグツグツと温泉を噴き出していた。

台地の上をゆったりと温泉が流れ、噴き出した所は湯けむりが上がっている。白砂の広い台地は全く足跡が無く、僕たちの背後にはサンダルの跡が点々と残されていく。

入浴場所を確かめてから、テントとタープを設営。温泉旅館の営業開始だ。

 

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今回はテントは二人別棟でゆったり。タープの下に大きいザックを置き、薪を集め、鍋に水と米を入れてから、入浴場所の土木工事に取り掛かる。

テント場から川に降りると温泉が湧いており、大型スコップで入浴場所を広げる。沢の水と混ぜて適温にして、ブルーシートを使って入浴場所を作ったが、思ったほど水深を稼げず、十分快適な温泉にならない。

 

ひとまず、温泉はそこで入る事にして、夕食の準備に取り掛かる。

今夜の鍋料理は塩味の鶏みぞれ鍋。

鶏もも肉ゴマ油とニンニクで軽く炒めてから、水と具材を投入。しばらく煮込んだ後、味付けをして、大根おろしを投入。

 

 大根おろしをおっぱい状にちょいちょいと乗せて、、、

「湯俣スペシャル噴泉丘鍋」の完成!!!

 

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すっかり冷え切った身体に鍋の温かさが染み渡る。焚火で炊いたお米と一緒に、お腹を十分満たしてから、ビールを片手に川へ移動し温泉に入浴。

イマイチ水深を稼げず寝湯になっちゃったけど、身体は十分に温まり、焚火の前に戻る。

多めに持ってきたビール、数日前から珈琲豆を漬け込んだ「珈琲焼酎」、そして赤ワインを飲んでから、師範が高校時代に好きだった女の子の話をグダグダし始めて、うぜーと思いながら記憶が無くなるほど飲み、#01の厳冬期用シュラフに潜り、気持ちよく(?)眠りにつく。

深夜に尿意を感じてテントを出たら、思わず声が出てしまうほどの夜空!

南の空にオリオン座、北の空に北斗七星が同時に見えるほど、満天の星空がパノラマに広がっていた。

 

長くなったので後編へ続きます。