湯けむり野営@北アルプス 191102-03 後編
さて、後編です。
早朝に一度目が覚めたけど、気持ち良くて二度寝してしまった。
寒い事は寒いけど前回よりマシ。前回は周り中凍結していて、鍋がカチンコチンに固まってたが、今朝は零下まで下がらなかったようだ。
テントを出ると、師範が手ぬぐいを持って帰ってきた。ひとっ風呂浴びてきたようだ。どうやら、昨夜イマイチだった入浴場所から少し下流に、最高な入浴場所を開拓したらしい!グッジョブ!
私も手ぬぐいを持って、朝風呂を頂く事にした。
噴泉丘の前を通過する。グツグツと先端から流れ出ている源泉は80度くらいだろうか。メチャメチャ熱い。それにしても奇妙な物体である。ここは地球だろうか。
そして、熱湯は台地をゆったりと流れていて、その先は川に注いでいる。
熱湯の流れを辿って歩いて行く。
熱湯が流れついた先に最高の入浴場所があるらしい。
ここだ!
右側からドバドバ熱湯が流れ込んでいる。
そして、左側は冷たい沢の水がサブサブ流れている。
そのちょうど中央。(赤い矢印)
石が流れをせき止めていて、その下流が巻き返しになって深くなっており、そこだけ40℃くらいの適温になっている。
早速、パパパッと服を脱いで全裸になる。
「パオーン!!!」
ドボンとそこにしゃがむと、ちょうど首まで浸かる水深で、水温はベスト!
右に寄るとアチチチ!!!
左に寄るとツメテー!!!
真ん中だけが最高に気持ち良い温度。
首までお湯に浸かって下流を向いた景色。冷たい風が頬を撫でる。
最高のビュー。ずっとここにいたい幸福感。
大自然の中、全裸になって最高の野湯を満喫。ムフフ。
すっかり身体も温まったので、服を着て、お湯の流れを辿ってテン場に戻る。
すると、朝食担当の師範が持ってきたサバを焚火で焼いていた。
サバ塩焼き定食。ご飯はシメジの炊込みご飯。
温泉たまごのつもりが放置しすぎて固ゆで卵になっちゃった。
そして、牛肉の赤身を焚火で焼く。数日前からハーブに漬けこんでおいたのだ。
赤ワインがまだ沢山残っていたのでちょうど良かった。
すっかりお腹が満たされる。
そして、持ってきた酒の量が多すぎたが、軽量化のために全て飲み干す。
のんびりし過ぎて、もうすぐ昼だ。このままだと高瀬ダムのタクシー時間に間に合わないので、急いでテントや野営道具を片付ける。
二日間開業した温泉旅館もここで営業終了。
行きよりは少しは軽くなったザックを背負って、川を少し下り、腰までの深さをスクラム渡渉。吊り橋を渡り、登山道を早足で帰る。
振り返ると、槍ヶ岳の北鎌尾根が見えた。「孤高の人」加藤文太郎が遭難した尾根。
ひたすら歩いて、だんだん暗くなり、寒くなってきた。
急がないと16時の最終タクシーに間に合わない!
南北に長い高瀬ダムの南まで来たが、タクシーは北側でまだ遠い。あ~もうタクシーは間に合わないなあと思った時、師範がボソッとつぶやく。
「あ、熊。」
50m程先、黒い物が道を横切って行った。
この瞬間、もう急ぐ気力が無くなり、ゆっくり歩く事にする。ザックが肩に食い込んで、痛くてたまらない。
辺りは真っ暗になり、ヘッドライトを点けてトンネルを通過。やはりタクシーはもういない。ガックリ。あと1時間の歩きだ。
暗い中に光る物が二つ・・・カモシカがじっとこちらを見ていた。
そして、もううんざりする程歩いて、歩いて、やっと七倉ダムに到着したのでした。
おしまい
PS : 全裸になって入浴した野湯ですが、どうやら竹村新道から下る登山者から丸見えの場所だったそうです。パオーン!