ちばアクアラインマラソンとデザイン
今回、私の仕事とする「デザイン」と、趣味とする「マラソン」において、奇跡のコラボが発生したので、ここに書き残すことにいたします。
【 プロローグ 】
10月某日。
デザインコンペの情報サイトを見ていたある日、ふとある文字に目が止まった。
「ちばアクアラインマラソン2018」完走賞(メダル)デザイン募集
むむむ!アクアラインマラソンと言えば、二年に一回、アクアラインの交通を封鎖して海ほたるを走る、千葉県の大規模マラソンイベントである。私自身出場した事はないが、マラソン好きなら誰でも知ってる超有名レースだ。
また、同級生のおさんが運営している人気ランナーブログ「ヨメとオイラのヘッポコラン日記」も第一回がアクアラインマラソンで、それからおさんは毎回連続で出場しているし、私のラン友は千葉県に住む方が多いので、県内のお祭りマラソンイベントとして、愛着を持って参加している人がいっぱいいる、とても馴染み深いレースでもある。
さて、こんな大規模マラソンレースのメダルデザインを自分が出来たら・・・デザイナーとしてよりも、ランナーとして、これほど光栄な事があるだろうか!
「ヨシ!決めた。出そう!」
【 メダルのデザイン 】
<デザイン案提出>
アクアラインだからデザインモチーフは海と決める。
同じく海沿いのマラソンレースでは横浜マラソン、神戸マラソン、いずれも完走者にメダルを贈っているが、メダルのデザインはさすがにセンスが良い。いやいや、千葉だって、負けないカッコいいメダルをデザインしないとなあ。
当初、複雑で凝ったデザインを描いていたが、コンペ要項に「複雑な形状はNG。シンプルな形状で」とある。主催者は斬新なデザインより、「公募を通じてみんなでメダルを作り上げて行きたい」と考えているのだろうか。ちょっと控えめのデザインに修正。
最終的に海ほたるを中央に配置して、波のウェーブとアクアラインを重ねた台形のデザインに絞った。一応、丸いデザイン案も考えたが、LINE投票もあるらしいので、インパクトのあるデザインの方が有利だろう。
11月中旬
デザイン案を提出用フォーマットに貼付けて、事務局へメール送信。
もっとリアリティのある表現をしてもいいけど、まあ、これでイメージは伝わるだろう。同級生おさんの様な本職のイラストレイターだったら、もっと魅力的なデザインをするんだろうなあ。
12月下旬
師走の慌ただしさの中、「ちばアクアラインマラソン準備室」からメールが届く。
「応募していただいたデザインがLINEの一般投票による選考の対象となりました。なお、投票は12/29から開始されます。」
「やった!ひとまず第一関門クリアだ!」
<LINE投票>
そして、二日後の12/29の夕方。地元のお好み焼き屋で、ビールを飲みながら、ふと思い出した。そうだ今日からLINE投票開始だった!
急いでLINEのアプリを開き、投票の画面を見る。
私のデザインは②である。丸型じゃないのは私だけw
139点の応募があり、6点が最終選考として残っているとのこと。
カラーで提出したが、6点共にグレーの図案で統一されている。
コンセプト
「アクアラインを越えて、海ほたるを望む光景を図案化しました。また、波を意識したゆったりと流れる様な曲線で、全体の形をまとめました。完走したランナーたちがメダルを手にして、達成感に包まれる瞬間を想像してデザインをしました。」
そして、現在の投票結果を見てみると・・・
まだ投票数は少ないが、なんと、現在、私のデザインが得票数でトップだ!
LINE投票と言う事は、お友達の多さが大きく影響するだろう。組織票で簡単に覆されてしまうかも知れない・・・。
なんとしても採用されたい私は、親族・友人に対して、SNSとメールを使って「LINE投票をお願いしますキャンペーン」を実施。さらにまた、友人関係や親類関係にも展開してくれた人もいて、本当に感謝感激でした。
そして、年を越して、LINE投票終了期間の1/16まで一日に何度も何度も、投票の途中経過を確認し、ハラハラする毎日が続く。
LINE投票が締め切られ、最終結果は・・・
「LINE投票をお願いしますキャンペーン」の結果、半数近い得票数を得る事ができました。投票して頂いた皆様、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
これで私のデザインに決まりか・・・と思われたが、そう言う訳ではなくあくまで上位3案が最終選考に進み、大会実行委員会によって決定されるとの事。どうなるか分からないがひとまず連絡を待つしかない。
<3Dデータ制作>
デザイン案として提出はしているが、自分的にはディティールにやり残した部分もあり、勝手に3Dデータを制作することにした。特に海ほたるが鬼ヶ島みたいだったので、もうちょっとカッコいい海ほたるにしたかった。
<3Dプリンターによるモックアップ>
知り合いに個人的にお願いをしてデータを送り、3Dプリンターで出力してもらった(Kくん、ありがとう!)。積層式の3Dプリンターで非常に細かいディティールは表現できないが、実際に立体になると良く分かる。
軽く耐水ペーパーで磨き、ゴールド色の缶スプレーで塗装。リボンを通してみるとかなりそれらしく見えた。
自分の首に掛けてどう?どう?と嫁に見せたり、鏡を見ながらニヤニヤしたり、しばし自己満足に浸る。
<デザイン採用決定の連絡>
2月某日 携帯に着信あり。
なんと、電話の向こうは「ちばアクアラインマラソン準備室」の方だ!
「選考の結果、永石さんの案に決定いたしました。また、来月に千葉県庁で表彰式をするので、お越しいただけませんか?」
「は、はい!ありがとうございます!表彰式もちろん出席します!!!」
仕事中に突然の電話でびっくりしたが、オフィスで一人静かにガッツポーズでした。
実は既に準備室へ、私が勝手に作ったレンダリングと3Dプリンターのモックアップ写真をメールで送っていたのだ。全く返信は無かったが、準備室の方は見ていてくれたようで、「凄いですね」とお褒め頂いた(^^)
今後のメダル製作の参考にしたいので、3Dデータを送ってほしいと言われたので、データを添付してメールをした。
【 表彰式 】
<まさかの事態発生!>
表彰式の内容について電話で説明された後、案内が郵送で送られてきた。千葉県庁のHPにも表彰式の概要が告知された。
日時 : 3/12(月)午後
場所 : 千葉県庁 教育長室
内容は、表彰式、デザインコンペの商品券授与、記念撮影。
チーバくんも来てくれるらしい!
それから、報道関係者が来て、囲み取材があるそうです(^^;
しかし、ここでまさかの事態が発生する・・・
表彰式二日前の土曜日。
私は嫁と子供を連れて、長野県のスキー場へ訪れていた。子供と一緒にリフトに乗っていた時、ふとゲレンデに設けられたスノーボーダー用のジャンプ台が目に入る。
「あの位のジャンプ台なら、スキーでも飛べそうだな。」
ちょうど冬季五輪が毎日のようにTVで放映された時期。脳内イメージはレジェンド葛西だった。
リフトを降り、目指すはジャンプ台。最初に目に入ったジャンプ台へ、徐々に加速していく。そして、思い切って踏み込み、一瞬宙に舞ったその時、思った。
「しまった、高すぎた。」
・・・以下略。
人生初の救急搬送を体験し、診断結果は「腰椎圧迫骨折」「左手首骨折」。
第一腰椎は台形に潰れ、手首の骨は完全に折れている。
当然ながら絶対安静・・・。
<表彰式本番>
そして二日後。むくり。
ゆっくりゆっくりと、なんとか歩けそうだ。電車で千葉県庁へ向かう。
せっかくの晴れ舞台なので、嫁と二人で出席させていただいた。
まずは準備室で事前打合せした後に、エレベータに乗り、教育長室へ向かう。
教育長室へ入ると、教育庁の方、アクアラインマラソン準備室の方、部屋の周囲には報道関係の方々がいて、私は部屋の中央へ案内される。
カチコチに緊張している私。
チーバくんの胸には、メダルのモックアップが掛かっていて可愛かった(^^)
そして、教育長より挨拶をいただき、商品券授与。
「グキッ!」
お辞儀をして商品券を受け取るが、この姿勢が一番腰に負担が掛かる!
しかし、TVカメラが回っているので表情は変えず、商品券を受け取った。
白い包帯が眩しい。私はチーバくんカラーのセーターを着て行きました。
それから、報道関係者やTVカメラにぐるっと囲まれて、いわゆる囲み取材ってのを受ける。質問に答えたり、カメラに向かってぎこちなく笑いつつ、至近距離で撮影されたりした。
早くもその日の夕方に、千葉テレビのニュースで私の映像が流れたそうで、はまちさんが映像を添付してメッセージをくれたり、鈍足親父さんがDVDに焼いて渡してくれた。翌日の千葉日報や東京新聞の地方版に私の写真が載り、きんぎょさんが購入してくれて、私まで送ってくれた。宝物になりました。ありがとうございました。
嬉しさと恥ずかしさでいっぱいだったが、千葉県庁で表彰式をしていただいて、テレビや新聞で報道されるなんて、骨折したばかりの腰と手首の痛みも忘れるくらい、本当に素晴らしく光栄な一日だった。
当然ながら、来年のアクアラインマラソンに出場するつもりだが、このレース、まずは抽選と言う第0次関門を越えなければ出場できない。準備室の方にレース出場の希望を伝えたら、メダルデザイナー枠として、前向きに検討します!との心強いお言葉をいただいた。
【 ちばアクアラインマラソン レース編 】
<出場権の抽選>
後日、準備室の方から電話があり、メダルデザイナー枠について協議したが見送りになったと説明を受ける。今後、受賞者が高校生だった場合にレースには出場できないのが理由との事だった(涙)
非常に残念だが、抽選関門を突破しなければ出場できない。
まずはアスリートランナー枠(男性でフル3:30以内)でエントリーするが、落選!
次は一般枠でエントリーして、やっと当選する事が出来た!
これで、完走すればやっと自分がデザインしたメダルを手にする事が出来る。来年の10月までにリハビリを頑張って、フルマラソンを完走できる体力に戻そうと思った。
<レース本番>
夏が過ぎて、いよいよアクアラインマラソン本番が近づいてくる。おさんランナーブログでも度々メダルの話題を取り上げてくれて、ブログ繋がりのラン友たちも、本番に向けて盛り上がってきた。ハービー兄貴を筆頭にヒヨコ仮装軍団が結成されたり、通常のマラソンレースとは違うお祭りムードがこのレースの楽しさだ。
おさんブログとしても、過去最大規模の読者大集合となるのは間違いない。
私にとってもメモリアルレースとなるので、メダルデザインをした事が分かるTシャツをアイロンプリントで作って参加しました。
背中で完走を目指すランナーを励ましたつもりです。
レース自体はファンランで走ったが、このレースは地元の応援が凄い!町全体がアクアラインマラソンを盛り上げるために参加しているみたいで、凄い数の子供達とハイタッチをした。エイドも充実してて、素晴らしい大会だった。ぜひ、2年後も参加したいと思う。
レース後は、だーまえさんが木更津駅近くに一部屋貸切で宴会場所を確保してくれて、おさんブログ繋がりのランナーで大宴会。乾杯の挨拶したり、メダルにサインしたり、亀さんのTJARの報告を聞いたり、それから、たくさんのラン友と話が出来て、最高に楽しい宴会だった。
<まとめ>
2010年の秋から走り始め、一度はマラソンへのモチベーションを喪失した時期もあったけど、忙しくても毎日必ず更新する、同級生のおさんランナーブログに励まされ、繋がったランナー仲間に刺激され、楽しく頑張ってマラソンを続ける事ができて、自己ベストも更新してきた。マラソンをきっかけに、他の色々なことにも、前向きに挑戦する意欲が湧いてきているのは間違いない。
おさんランナーブログに出会わなかったら、メダルデザインコンペの募集を読んだときに何とも思わなかったと思います。
今回のメダルデザインコンペで私のデザインが採用されて、それをきっかけに、何か楽しんだり、頑張れたりできたりできた人がいたら、ランナー仲間たちへ少しは貢献できたかなと思って嬉しく思います。
ようやく手に入れた完走メダル。
フル、ハーフ合わせて17000人のうち完走率88%程だったので、約15000人のランナーに配られたようだ。凄い数ですよね。
【 番外編 】
<上位入賞者のメダルデザイン>
2018年8月某日
準備室より電話があり、上位入賞者及び車椅子部門の方に贈るメダルのデザインを依頼された。一般ランナー用のメダルデザインをベースにしたデザインで、準備室へデータを送った。当日、現物を目にする事は出来なかったが、後日、写真を送っていただいた。