2022_富士山頂往復マラニック③(五合目~ゴール)
時間は8時40分。過去にDNFした時は五合目までだった。
ここからは、いよいよ今まで経験の無い「下りパート」になる。
すでにスタートから16時間以上行動を続けている。残り50kmもある事実を思うと笑えてくるが、疲労感はそれほどではない。好天の富士登山が気分転換となって、リセットされた感じでもある。
日差しは既に強いが、まだ標高が高いので涼しい。昨夜ひたすら登ってきた富士スカイラインをこれからは下っていく。
思えば、野辺山の馬越峠、オクムの後半、FTRみなのの最後8kmの下りなど、春から経験したきたレース後半の長~い下りを思い出す。下りは脚へのダメージが大きいけど、ここでタイムを詰めないと間に合わない!!!
まずは14kmほど先の料金所跡が目標だ。
ギアを切り替え、九十九折のロードを転がるように下り、登りはメチャ速い鉄人石井さんがなぜか下りはゆっくりだったので、お先に~と行かせてもらう。そこから、しばらくは一人旅で淡々と進み、料金所跡を通過。
その先に私設エイドがあって本当に感謝。コーラとプリンをいただく。この暑さの中、エイドの無い区間での補給は本当にありがたい。
そこから何人か追い抜いて、数キロ進んだところでようやく西臼塚エイド着。
麦茶を満タンまで胸のボトルに補充。もうスポドリは飽きたのだ。
大盛のマカロニスープをいただいて補給。ちょっと多い気がしたけど、食べやすくて、全部食べることができて良かった。まだまだ先は長い。
エイドを出てまた走り出す。また九十九折になり、徐々に暑くなってくる。時々日影があると少しは涼しいのだが、進めど、進めど、あまり景色が変わらない・・・
五合目を出てここまで20kmくらいは下ってきた。
割と良いペースできたが、とうとうエネルギー切れと暑さと疲労で、全く走る気がしなくなってしまった・・・。
今まで抜いてきたランナーに、逆に次々と抜かれていく。
あー辛い、疲れた、それに暑い。
富士宮から先はもっと暑いしはずだし、まだまだ先は長い。
トボトボと歩きが続く。ちょっと走ると脚が痛い。ダメだ。
ここまで頑張ってはきたが、自分の実力的に無理なレースだったのだろうか。
幸い、アーリースタートだったので、18時までにはなんとか辿り着けるか。
時間外ゴールでも仕方ないか、まずはゴールに辿り着ければ良いか。
そういえば、さりー夫妻が追い付いてこない。何かトラブルがあって遅れているのだろうか。もう時間内ゴールは諦めているのだろうか。
次々にネガティブループに脳内が支配されていく。
5kmほどトボトボ歩いて、やっと最終自販機のTOPGUNに辿り着く。
水を頭から被り、コーラを飲んで、またトボトボと歩いていると、後ろから声がした。
さりー夫妻が追い付いてきた。
ぱぱさん「やっと追い付いた!TOPGUNで聞いたけど、まだギリギリ制限時間内に間に合うかもよ!」
さりーさん「一緒に行こうよ!」
完全に心が折れていた私にとって、信じられない言葉が続く。
これからもっと暑くなるのに、ここからペース上げるなんてありえない。
「もう俺ダメ。心折れた。先に行って~」と二人を見送る。
すると、あっという間に二人の姿は見えなくなってしまった・・・。
何か消化しきれない気持ちが残る。これで良いのだろうか。諦めていいのだろうか。
最終コンビニのファミマが見えてきた。
食欲は無いが、ヨーグルトとコーラを買って、イートインコーナーで食べながら残っている距離と時間を考える。
残る距離は20km強。残された時間は3時間だ。
浅間大社までは下りだが、富士宮駅を過ぎたら日影もない灼熱のロードになる。でも、ゆっくりでも走り続けることさえ出来れば、確かにギリギリ間に合うかもしれない。
今、諦めてトボトボ歩いて後悔するより、精一杯走ってどこまでいけるか?!
そうだよ、自分の持っている力を全部出し切るしかないだろ!
ポジティブな自分がようやく出てきた。ファミマを出てまた走りはじめる。
速くはないが、とにかく歩かないで走っていく。
浅間大社を越えて左折。富士宮駅を右に車の多いロードを進む。気温が上がり、日差しはジリジリと容赦なく照り付ける。全然ランナーに会わないので不安になって、時々スマホでルートを確認する。道を間違えたらアウトだ。
信号待ちの間に、自販機で富士山のおいしい水を買って頭から被る。キンキンに冷えていて最高に気持よくて、一瞬生き返る。
近いようで遠い富士ICをやっと右折。スマホを見ると残り6km程度で残り1時間。
歩かなければギリギリ行ける!歩かなければギリギリ行ける!と呪文のように言い続ける。暑くて暑くて苦しい。歩きたい。
港大通りを精一杯のスピードで走っていく。二人の元気なランナーに抜かれた。
ユニクロがあれば右折なんだけど、なかなか見えてこない。やっとユニクロが見えた!ひまわりが咲くユニクロの横を曲がる。あとちょっとだ!
線路の下をくぐって、川を越えて、やっと見慣れた港沿いの道へ帰ってきた。
もう大丈夫だと思ったら、思った以上に直線が長く、しらす丼を曲がっても田子の浦みなと公園はずっと先に見える!ヤバい!このままだと間に合わない!
ここまで来て結局時間オーバーなんて絶対ヤダ!
やっとみなと公園まで着いたけど、最後の登り坂が辛い!
坂を登り切った時、さりー夫妻やトラさん、受付をやっているナオさんが見えた。
「よく来た!もう大丈夫!」「あとちょっと、がんばれ~!!!」と言う声援が聞こえる。ギブアップ宣言をして別れたので、まさか間に合うとは思っていなかったと思う。
声援を聞くと嬉しくて、不思議とまだちょっと頑張れた。
公園の中ほどを通過して、海沿いのゴールゲートへ向かう。ゴール50m前で時計を見る。ようやく時間内ゴールを確信。
青いおっTを着たキヨさんがゴール係をやっている姿が見えた。
ゆっくりと歩いてゴール。
ゴールゲートをくぐったのは16時18分。制限時間の3分前。
長くて暑くて辛かった、23時間57分の旅が終了。
「間に合って良かった」この一言に尽きる。
精も根も尽き果てて、へたりこんだ。
スマホもガーミンもいつの間にか息絶えていた(笑)
そして屍となる(笑)
そして、人間の干物(笑)
人間、意外と熱中症にはならないもんだね。
まとめ
5年越し、三度目の正直でやっとゼロ富士@富士山頂往復マラニックを完走することができました。本当に嬉しい。
このロマンのあるコンセプト。そして真夏の登山とマラソンを一度に味わう過酷なレース。エイドも少なく自己責任だけど、萩田さんのアットホームなマラニック。本当に有難い多くの私設エイド。
この春、ここを目標にレースを経験してきて、得られた自信や脚力、補給や装備などが無かったら完走できなかったと思う。5年前のDNFだった自分では見えなかった景色が今見えている実感がある。そして、こんなに復路がキツイなんて・・・
15時から18時の間で勝手にスタート、完走の証拠も賞状も無く、メダルも無い。結果も自己申告。誰に褒められることもないけど、完走できた事実は自分の中に確実に残る。
自分で自分に「良くやった」と褒めてあげられた。
完走できたのは自分の力だけど、力を出し切れたのは仲間がいたおかげ。
弱い自分だけだと、自分の力を出し切ることができない。
多くの仲間に感謝しかない。
マラソンは色々なことを教えてくれます。
もう二度と、このレースには出ないと誓ったのに、もう来年の戦略を考えている自分。
あーやだやだ。
おしまい